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■ Section 7 ■ 覚えてほしいコマンド ( 学生の方へ ) :
レポートを
pLaTeX2ε
を利用して提出される学生の方が増えて
きました。 頼もしいかぎりです。 しかしながら、
気になる点 もあります。
その中でも、特に注意 しておいて
いただきたい コマンド を述べてみます。
第 (1) 項 \pagestyle と 12 ポイント
第 (2) 項 1 バイト文字と 2 バイト文字
第 (3) 項 \textheight と \newpage
第 (4) 項 \vspace と \vspace* と \hspace と \hspace*
第 (5) 項 \quad と \medskip
第 (6) 項 ascmac.sty について
第 (7) 項 Graphics パッケージの使い方
第 (8) 項 文書のメリハリについて
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(1)
\pagestyle と 12 ポイント文字 :
まず、はじめは \pagestyle
についてです。 一枚のレポートにでも、ページ数の 1 を出力してある
ものを見かけることがよくあります。 普通は、
\pagestyle
{ plain }
と書きますが、一枚のときには
\pagestyle
{ empty }
と記述するのが正解です。
さらに、レポート採点のときに感じるのは、
文字の大きさ
についてです。
手書きのレポートの後に、普通の 10 ポイント指定での pLaTeX2ε で書かれた
レポートを見ると文字の大きさが、とても小さく見えてしまうものです。
ですから、できたら文字の大きさを 12 ポイント指定で書いていただきたい
のです。
12 ポイントの指定
は次のようにします :
\documentclass[12pt]{jarticle} \pagestyle{plain}
(2)
1 バイト文字と 2 バイト文字 :
ここで、1 バイト文字
とは半角文字つまり
欧文および算用数字、
2 バイト文字 とは
和文全角文字
を意味します。
日本語の
TeX 文書を書くとき に、
特に注意したいことは
欧文および算用数字 には必ず
1 バイト文字
を用いるということです。 そして、この
1 バイト文字の
前後 にも、
やはり 1 バイト文字分の空白
をあけると言うことです。 このことを実行するだけで、随分と
きれいな出力が得られます。
さて、括弧 についてですが 欧文用 1 バイト文字の ( 欧 文 ) よりも、 和文用 2 バイト文字の ( 和 文 ) を利用 するようにしてください。 そのほうが、TeX 文書への 収まり具合が良いと考えるからです。
(3)
\textheight と \newpage :
つぎに、レポートは
B5 版の用紙
で提出されることが多いのですが、よく見てみると
レポートの上下の余白が空きすぎていることに
気がつくはずです。
初期設定では、どうしてもこのようになってしまいます。 そこで、次のように
\textheight を利用してみましょう :
\documentclass[b5paper,12pt]{jarticle} \pagestyle{plain} \setlength{\textheight}{18cm}こうすると、実は本文領域の縦の長さが 18cm になるだけで上部の 空白はそのままです。
\documentclass[b5paper,12pt]{jarticle} \pagestyle{plain} \setlength{\textheight}{\paperheight} \addtolength{\textheight}{-\headheight} \addtolength{\textheight}{-\headsep} \addtolength{\textheight}{-\footskip} \addtolength{\textheight}{-\topskip} \addtolength{\textheight}{-0.3cm} \divide\textheight\baselineskip \multiply\textheight\baselineskip \addtolength{\textheight}{\topskip} \addtolength{\textheight}{0.1pt} \setlength\topmargin{\paperheight} \addtolength\topmargin{-\textheight} \addtolength\topmargin{-\headheight} \addtolength\topmargin{-\headsep} \addtolength\topmargin{-\footskip} \setlength\topmargin{\topmargin} \addtolength\topmargin{-1in}しかし、 実際の問題として 数枚の B5 版の用紙の場合には、これでは大袈裟すぎます。 次のような、私自身が利用している方法を紹介しましょう。 コマンドの \textheight と \vspace* を使うものです ( \vspace* については、 つぎの項で説明します ) :
\documentclass[b5paper,12pt]{jarticle} \pagestyle{plain} \setlength{\textheight}{19cm} \vspace*{-3cm} . . . \newpage \vspace*{-3cm} . . . \newpage \vspace*{-3cm} . .ここでの値の、19cm と -3cm ( マイナスです ) は各自の好みで変化させてください。 また、\newpage を TeX 文書のどこに 書けばよいかですが、それは dviout でプレビューすればページの 切れ目がわかりますから、その場所に \newpage を書き込めば良いわけです。
(4)
\vspace と \vspace* と \hspace と \hspace* :
TeX 文書は、非常に細かい微調整が自分の好みで出来るように
なっています。 実際に、
文字を 1 スケールドポイント = 約 5.4 × 10 -6 mm で
配置できるのです。 そこで、
TeX 文書の微調整
をおこなう時に
大活躍する
のが次の 4 つのコマンドである
\vspace と
\vspace* と
\hspace と
\hspace* であります :
コ マ ン ド | 命 令 の 意 味 |
\vspace { height } | 行間を height の値だけ空ける |
\vspace* { height } | ページの頭に使う \vspace 命令 |
\hspace { width } | 文字の間を width の値だけ空ける |
\hspace* { width } | 行の頭に使う \hspace 命令 |
上でも述べたように TeX は、細かい微調整が可能です。 それを充分に
可能にするのが、ここにあげた
\vspace と
\vspace* と
\hspace と
\hspace* の 4 つのコマンドなのです。
極端なことを述べれば、 『 この 4 個を確実に使いこなせれば、なんでもできる 』 と私自身は考えることがあります。さて上の 4 個のコマンドでは、 そのつどに height および width の値を指定するわけですが、 次の 第(5)項 では値の指定が必要 なく簡単に利用できる 代用コマンド に ついて説明しましょう。
(5)
\quad と \medskip :
まず始めは TeX 文書の中において、
文字の間に微小な空白
を空けたい時に用いるコマンドです :
コ マ ン ド | 空 白 の 幅 | 数式モード以外 |
\quad | 全角の空白 ( クワタ ) | 利用 可 |
\qquad | \quad の 2 倍 | 利用 可 |
\_ | \quad の半分 | 利用 可 |
\, | \quad の 1/6 倍 | 利用 可 |
\> | \quad の 2/9 倍 | 利用不可 |
\; | \quad の 5/18 倍 | 利用不可 |
\! | \quad の -1/6 倍 | 利用不可 |
\begin{eqnarray*} \int \!\!\! \int_D f(x,y)\,dx\,dy \end{eqnarray*}次は TeX 文書の中において、 段落の間に適当な大きさ を空けるときに用いるコマンドです :
コ マ ン ド | 空 白 の 大 き さ | 空 白 の 数 値 |
\smallskip | 小 さ い | 2pt から 4pt |
\medskip | 中 ぐ ら い | 4pt から 8pt |
\bigskip | 大 き い | 8pt から 16pt |
\documentclass[b5paper,12pt]{jarticle} \usepackage{ascmac} \pagestyle{plain} \begin{document} 普通の改行です。 コマンドを利用した改行例です。 小さな空白ができます。 \smallskip 次に、中ぐらいの空白ができます。 \medskip そして、大きな空白ができます。 \bigskip このように、コマンドで改行幅を調整することができます。 \newpage 続いて、\yen \verb|vspace| を用いた改行例です。 まず、普通の改行です。 次に、3pt の空白ができます。 \vspace{3pt} さらに、6pt の空白ができます。 \vspace{6pt} そして、12pt の空白ができます。 \vspace{12pt} このように、\yen \verb|vspace| で改行幅を精密に調整することもできます。 \end{document}
(6)
ascmac.sty について :
アスキー社 が開発したスタイルファイルの
ascmac.sty は、
pLaTeX2ε に標準装備されています。 この
ascmac パッケージ を
エディタで開いてみると、次のような一行が書いてあります :
\input
{ tascmac.sty }
つまり、本体は tascmac.sty
なのです。 そして、エディタで開いてみると色々なことがわかります。
例えば、第(5)項 で述べた
¥記号 を出力するコマンドですが TeX では
¥記号 が特別な意味を持つために、標準では
この記号は出力できません。 そのために代用として、2 バイト(全角)文字
の¥を用いたり、英語の
Y に等号の = を
重ね書きするコマンドの \llap を利用して
Y\llap= などと書いたりします。
そして、ascmac.styのなかにも
便利な記号の出力コマンドのひとつに
¥記号 を出力するコマンドとして
\yen が含まれています。 このなかで
\yen は次のように定義されています :
\def\yen{\leavevmode\hbox{\iftdir\yoko\fi
\setbox0=\hbox{Y}Y\kern-.97\wd0\vbox{\hrule height.1ex width.98\wd0
\kern.33ex\hrule height.1ex width.98\wd0\kern.45ex}}}
ここに、何が書いてあるのかを 解読 できますか?
( これは TeX の言葉 で、
¥記号 のコマンド
\yen は
英語の Y と
ヨコ棒 2 本 から作ると書いてあるのです。)
私自身このスタイルファイルを配布プリントに活用しています。 そして その都度思うことは、これは pTeX の開発にたずさわる俊英から、ユーザーへの 心暖まるプレゼント なのではないだろうかということです。 本当に良く出来たスタイル ファイルです。
ここでの例は、すべて私が 2000 年度に配布したプリント ( B5 版、12pt ) からの抜粋です。 ( 実際の出力例は、最後でお見せいたします。) つまり、 TeX 文書は 次の二行から始めます :
\documentclass[b5paper,12pt]{jarticle} \usepackage{ascmac}● screen 環境 : 角の丸い枠の中に文字列が出力されます。 まわりの線の太さは \thinlines で与えられる 0.4pt です。
\begin{screen} \quad \textbf{5 次以上}の代数方程式の \textgt{代数的解法が不可能である}ことの証明を通して、 \textgt{ガロア理論の基礎}を学習する。 \end{screen}● itembox 環境 : 上の screen 環境において枠の上部中央にタイトルを付けた形式で出力 されます。 まわりの線の太さは \thicklines で与えられる 0.8pt です。
\usepackage{ruby} \begin{itembox}{\Large {\gtfamily \ 概 \hspace{0.8cm} 要 }} \quad \ruby{秋桜}{コスモス}の咲く頃となりました。 4 月から 代数学において行列の基礎を学んで参りました。 これからは、行列の \ruby{幾}{\scriptsize ◎}\ruby{何}{\scriptsize ◎}\ruby{学} {\scriptsize ◎}への応用についての学習を始めることにしましょう。\\ {\large {\gtfamily \ 目 \ 標 :}}\, {\gtfamily 2 次 \ruby{曲\, 線}{きょくせん} の分類} \, および \, {\gtfamily 2 次 \ruby{曲\, 面}{きょくめん} の分類} \, を行う。\\ \end{itembox}さて、ここでルビを付ける ruby パッケージ の ruby.sty は、 参考文献 にある 奥村先生の 『 [改定版] LaTeX2ε 美文書作成入門 』 の 85 ページより、次の 13 行からなるファイルに ruby.sty と名前を付けて \tex\platex\base に入れれば良いのです ( 記号の意味は、 同書を参照してください )。 使い方は、上の例が参考になることでしょう :
\newcommand{\ruby}[2]{% \leavevmode \setbox0=\hbox{#1}% \setbox1=\hbox{\tiny #2}% \ifdim\wd0>\wd1 \dimen0=\wd0 \else \dimen0=\wd1 \fi \hbox{% \kanjiskip=0pt plus 2fil \xkanjiskip=0pt plus 2fil \vbox{% \hbox to \dimen0{% \tiny \hfil#2\hfil}% \nointerlineskip \hbox to \dimen0{\mathstrut\hfil#1\hfill}}}}● shadebox 環境 : 影の付いた長方形の中に文字列が出力されます。 影の幅は、 \shaderule で調節します。 指定がない 場合は 5pt が標準となります。
\setlength{\shaderule}{4pt} \begin{shadebox} \vspace{0.3cm} \hspace{0.6cm} {\large \textgt{数学とは考えて理解する学問である}} \\ \hspace{8cm} − {\large \textsl{Anonymous}} − \vspace{0.2cm} \end{shadebox}この例を見ると、先の 第(4)項 で私が 『 この 4 個を確実に使いこなせれば、なんでもできる 』 と語った意味が理解していただけることと思います。
● boxnote 環境 : メモ用紙を破いたような感じの枠の中に文字列が出力されます。
\begin{boxnote} \quad {\large \textgt{数学 \, 一言メモ:}} \quad {\large \textbf{Q.E.D.}} \ {\large について}\\ {\normalsize 証明(Proof)の終わりに見かける 『\textbf{Q.E.D.}』について解説しましよう。 これはラテン語の「 quod erat demonstrandum 」のことであり、 英語では「 which was to be demonstrated 」に該当しており、 「 以上が証明すべきことであった 」 または単に 「 証明これにて終わり 」 の意味で用いられています。} \end{boxnote}● 網かけの命令 : コマンドには、 \mask, \maskbox, \Maskbox の 3 種類が用意されています。 これにより、 文字列に網が掛けられて出力されます。 この網掛けのパターンは 11 種類 あります。 下の例では、中央に出力する ために center と minipage 環境を利用しています。
\begin{center} \begin{minipage}{13cm} \Maskbox{12cm}{1.5cm}{A}{c}{0.4pt} {\LARGE \textgt{代数学特論 夏休みレポート問題}} \end{minipage} \end{center}
■ ここで、実際に以上の ascmac.sty を利用して作成した TeX 文書の出力例 をごらんください : ascmac 1 、 ascmac 2
(7)
Graphics パッケージの使い方 :
このパッケージでは、スタイル・ファイルの
graphicx.sty
を利用します。 そして、
Ghostscript のインストール
がしてあれば、dviout for Windows による
EPS 図版の貼り込み
も可能になっています。
Graphics パッケージの利用方法の詳細は、
参考文献
の 乙部 ・ 江口 共著 :
『 Vol.1 Basic Kit 1999 』 の Chapter 6
が大変に参考になります。
■
ここで サンプルのひとつ として、
EPS ファイルの
sin.eps
を TeX 文書に貼りつけて作成した配布プリントを、まずはご覧になって
みてください :
サンプルの出力例
さて、この TeX 文書の作成は次のようにします。 まず、
2 次元および 3 次元のグラフを作成する機能を持っている
GUNPLOT
を用いて
postscript eps 形式で出力
した EPS ファイルの
sin.eps
を TeX の原稿のなかに取り込みます :
\documentclass[b5paper,12pt]{jarticle} \usepackage{graphicx} \begin{center} \includegraphics{sin.eps} \end{center} \end{document}続いて、この原稿を pLaTeX2ε で処理してできる DVI ファイル を dviout for Windows でプレビューする時に、 Ghostscript の利用 により、図版の EPS ファイルを sin.pbm なる PBM 形式に変換 してから dviout でプリントアウトしたものです。
■ さて、同じように GUNPLOT を用いて作図した関数 y = sin x , y = cos x , y = exp x , y = log (1+x) の Taylor 展開の説明の図 をごらんください : Taylor 展開 1 、 Taylor 展開 2
(8)
文書のメリハリについて :
日本語の長いレポートの文章が、小説のように明朝体だけで書いてあると、
思いのほか読みづらいものがあります。 ここで、
TeX 文書における
メリハリについて
考えてみることにします。
私が気付くことは、次のようなことです :
ほかにも注意すべき点があるかも知れませんが、少なくとも
上記した 12 項目
について
は記憶に留めておいてください。
できるだけ早く、これらの 重要なコマンド を
自分自身のもの にしていただけたらと
思っています。
さて TeX を習い初めのころ は、コマンドを 覚えたりで苦労するものです。 ただ一つ確実に言えるのは、解説書をいくら 読んでもなかなか上達しないことなのです。
TeX 文書を書いて、何度も、何度も上で述べたことを繰り返すのです。 時間がかかるかも知れませんが、この過程の中で少しずつ色々な事柄が身に つくのです。 そして、次第に自分のスタイルが出来あがっていくのです。
新しく始める pLaTeX2ε は、決して難しいものではありません。
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